2012年08月22日

配置薬販売業の営業


過去に勤めていた、配置薬販売業(置き薬)の営業体験談です。

配置販売業は、薬箱に胃腸薬や風邪薬、目薬などが入っており、使った分だけ次回訪問時に代金を支払う富山の置き薬と同じ仕組みのものです。

この薬箱、貴方の家庭にも置いてありませんか?

えっ!ない?

そうですよね。最近はドラッグストアも増え、置き薬の必要性も薄れてきているのかもしれません。


それでは体験談です。

ここでは都合上、社名は伏せておきますね。

きっかけはハローワークで求人募集があったので、面接受けたら簡単に合格したからです。余程人手不足だったのでしょうか?雇用条件はあまり良いとは言えませんけが、贅沢は言っていられませんから、とりあえずここで頑張って見ることにしました。

当時は残念ながら、将来のビジョンなんてものは全く無かったですね(笑)

採用後に先ず初めに、業務内容について社員研修を本社で受けます。社員研修は2泊3日で行われます。

研修はお決まりの会社が創業されてからの経緯や業務内容及び営業方法とセールストークの訓練でした。一番記憶に残っているのが、配置薬の名称と効果と健康食品のセールストークを丸暗記したことですね。

これには参りましたよ。

配置薬と言っても数十種類もあり、初めて聞く名称と効能でしたから、これには苦労しました。頭の中で「これを覚えて役に立つのか?」という疑問はありましたけど、この業界で生計を立ねばなりませんから、必死に暗記します。

なんとか無事に研修は終了しましたけど、覚えることが多くて大変でした。予備知識が全くなかったのが幸いしたのかも知れません。


その後、採用された営業所でいよいよ実務を行う訳です。実務と言っても最初から新人をお客様の所へ訪問させる訳にはいきませんから、1ヶ月程度、先輩社員と同行営業しながら仕事内容を徐々に覚えて行き、問題ないと見極めを頂いてから一人で営業することになります。

半月程度で引き継ぎは完了しましたが、前任者は私に早く独り立ちして欲しくて仕方がなかったようです。何故かな?と思っておりましたが、後で理由は説明します。

そんなことも知らず無事引き継ぎも終了し、いよいよ一人で営業です。営業マン毎に担当エリアは勿論ありますけど、私が引き継いだエリアは、私にとって全く土地勘のない所でした。ですから移動には苦労しました。

数百件あるエリア内の顧客を車で移動しながらの営業です。カーナビもない時代だったので、助手席の地図とにらめっこしながら移動です。当然不慣れなため目的地に時間通り到着できないことや、事故を起こしそうになったこともあります。道を覚えるのに苦労し、最初の頃の営業効率は大変に悪く、悪戦苦闘した記憶があります。


当時の配置販売業の業務内容をご説明します。


@薬箱(救急箱)の設置

新規開拓と言うものです。先ず薬箱を置いて頂かないと商売になりません。これを置いて頂くことにより、薬の消費が期待できます。会社には新規開拓の専門社員もいたくらいですから、この薬箱の設置が生命線になります。営業は薬箱の設置から始まります。

私にも新規開拓のノルマはありました。ノルマは毎月5件。これが結構なプレッシャーになるのです。新規訪問先の断り文句は、「薬を使いません」「近所のドラッグで買います」「箱を置く場所がありません」が多かったですね。それでも半ば強引に置いて帰ります。しかしあまり強引にやると次回訪問時に「箱を引取って下さい」と言われることが多かったので、このバランスを判断するのも営業のスキルです。

薬箱の設置により次回訪問する口実は完了です。薬箱の新規設置が出来た時は、嬉しかったですね〜。


A薬箱設置先の顧客へアポ取り

@で設置された顧客へ配置薬の点検と称して訪問します。

定期訪問2ヶ月〜3ヶ月に1回の目安で訪問します。優良な顧客は頻度が高くなりますが、その逆の顧客は疎遠になりがちです。

箱が置いてあるだけの顧客は訪問しなければいいのですが、そうはいきません。会社の規定により最低6カ月に1回は訪問しなければならないのです。それに配置薬には消費期限がありますので、薬の点検も必要です。

顧客カードを見ながら訪問頻度とエリア、そして顧客の都合を考え、その日の訪問ルートを決定するのです。しかし、これにまた苦労します。

企業は休日でない限りアポ取りは必要ありませんけど、個人宅は大変です。特に共働きで留守の多いお宅はアポが取り難いのです。その場合、どうしても訪問頻度が少なくなります。6か月に1回という社内規定がありすから、放置しておく訳にいきません。

そこで、その様な顧客の未訪問対策のため週に1回、フリータイムと称した残業日があります。17時以降にしか訪問出来ない顧客に限定し訪問するのです。当然この日は帰社は遅くなりますので、帰ってから締めの業務をするのが憂鬱でした。

フリータイムと言えば聞こえはいいですが、要するに「放置してある顧客に対しても売上を上げてこいよ」「遅くなっても残業手当は支払わないけどね」と会社から命令されている様なものです。

まるで、鵜飼いの鵜状態です(泣)

鵜匠は会社で鵜は社員。社員の首は、社内規定という紐で巻かれています。

また、鵜は喉の紐の巻き加減によって、小さなアユは胃の中へ入ります。小さなアユだけではお腹を満たせず、鵜は満足できません。

これは、売上目標以上を達成すれば、社員の歩合給という少しだけのご褒美がいただける構造と全く同じです。当時私の手取り収入は24万円程度で、歩合給がついて25〜26万円。いや〜、決して満足できるレベルではありません。

世の中は、鵜匠になったものが優位に立てるのです。


B配置薬の点検と営業

そして予定を組んだ訪問先で、使用された配置薬の確認、消費期限の点検と交換、使用分と新薬の補充、売上伝票の記入を行います。最終的に間違いがないか、顧客立会いの下確認を行い終了です。

ある個人宅でしたが、薬の使用についてトラブルもありました。

普段とおり使用されていた薬の請求伝票を記入し代金の請求を申し上げた所、訪問先のご主人とこんなやりとりが・・・。


私:「有難うございます。胃腸薬と目薬が使用されております」

ご主人:「なに!」「そんな薬使った覚えがない」

私:「えっ!」

ご主人:「使っていないよ」

私:「明らかにパッケージは開封され使用されておりますが・・・。」

ご主人:「そんな薬使った覚えがない」「お前らが、前の点検時に見落としていたのではないか」


前任者が記入した、前の伝票を確認しても未使用のままです。


私:「前の伝票を確認いたしました。伝票では未使用となっておりますが・・・」

と、恐る恐るパッケージの開封状態をお見せし、使用分をお支払いいただく様、何度もご説明します。しかし、分かって貰えません。


挙句の果てに、


ご主人:「おい!薬屋!」「こんな薬箱持って帰れ!」「もう二度と来るな!」

私:「すみません」「なんとか引き上げだけはご勘弁ください」

ご主人:「だめだ!だめだ!」「大体お前ら薬屋は、薬九層倍で丸儲けじゃないか!」「使っていなものまで請求しやがって、詐欺みたいな商売だな」 と罵倒されます。


代金を支払いを拒否した上、無茶苦茶な言いがかりです。

薬九層倍なんて言葉はもう死後。薬には開発費や人件費、販売経費など諸費用がかかっております。

しかしこの言葉、数々の訪問先で嫌と言うほど聞かされました。もういい加減うんざりしておりましたから言われる度、適当に笑って誤魔化してましたけどね。


感情的になられると、どうしようもありません。疲れたので私はもう諦めます。


私:「申し訳ございません。この度はこちらの不手際です」「それでは、薬箱は持ち帰ります」「誤解を招いて誠に申し訳ございませんでした」

ご主人:「・・・(憮然としています)」


結局お支払いいただけず、代金を踏み倒されます。おまけに薬箱も持って帰ることとなり暗い気持ちで帰ることに。今で言うモンスター〇〇です。

会社規定で、このような未払い分は事故扱いとなり、社員への負担はありません。ここは良心的です。蒸発されて連絡先が分からない方、口座振替の引き落としが出来ない方など様々な人間模様がありました。

しかしこの支払い拒否、たったの千数百円だったと記憶しておりますが、こんな少額で人は支払いを頑なに拒否し、そして怒り爆発させ豹変するのですね。パチンコやコンビニで無駄遣いするのは平気なのに・・・。

価値観が理解できません。


話を元に戻します。


訪問し、薬が使われていればここで売上が上がります。しかし、この薬の消費による売上金額ですが、実は営業マンが配属されたエリアによって大きな差があるのです。

私の担当エリアは1ヶ月当りで2万円〜4万円でした。皆様健康だったのでしょう(笑)、殆ど薬を使わないエリアでした。

ある営業マンのエリアは1ヶ月当り30万円〜50万円もあり、実に10倍以上の開きがあります。こうなる要因は顧客のうち、高齢者が占める割合にありました。薬の消費が多いエリアの顧客には高齢者の方が多く、薬の消費量が多かったようです。

高齢者は、外へ出かけるにも自由がきかず、手軽に売薬を使用できるメリットの方が大きかったのでしょう。薬で売上が見込めますから、商品販売営業に費やす労力は少なくて済みます。配置薬の消費が多ければ、訪問し世間話をしているだけで、本日の売り上げはある程度確定です。高齢者は話し相手が欲しいですから、世間話をして薬を補充するだけでいいのです。

ノルマの半分を薬の売上で賄えることは、大きなアドバンテージで、羨ましかったですね。

しかし私のエリアは薬の消費での売上は期待薄。


私が営業担当となったエリアは、他のエリアと比べ薬の消費が極端に少なく特異だったのです。


どうやら前の担当者は、「薬が消費されない結果、商品販売に重点を置かねばならない」「営業所から遠方である」を理由にこのエリアから外れたかったようです。


同じ時間内で労働力を投下して頂けるお給料に差がなければ、そりゃだれだって楽な方に行きたいですよね。

後で分かったのですが、新規採用はこのエリアになることが事前に決まっていました。それが私です。気付いた時は後の祭り。どうやら貧乏くじを引いたようです。

因みに私のノルマは、販売売上1ヶ月当り80万円で、会社規程の訪問件数は1日当たり最低18件です。

このエリアは薬で売上の見込みがたたないのですから、他で売上を上げなければなりません。


実は、ここに利益構造の仕組みがあります。

配置販売業には薬の販売・交換・補充だけでなく、健康食品や化粧品、栄養ドリンクなどの商品販売もあるのです。

商品は、リンゴ酢、健康茶、栄養ドリンク、ビタミン剤、霊芝、田七人参、ブルーベリーエキス、肝油ドロップ、化粧水、日焼け止めクリーム・・・。ドラッグストアが移動しているようなものです。

中には高価な商品もありますから、これらの商品を販売しノルマを達成するのです。このエリアでノルマを達成するためには、商品販売で売上を稼ぐしかないのです。一生懸命に商品を売り込む訳です。

中には当日商品購入を躊躇されるかたもいらっしゃいます。その場合、訪問先へ商品を預けて帰ります。なぜならば預託しておけば、後日に商品使用が期待できるからです。言い方を変えれば押し売りです。しかし、、この方法で成功した経験は皆無でしたね(笑)


商品の中には効果効能が、「眉唾ものではないのか?」と疑念を抱く様なものもありましたが、そんなこと言っていられません。兎に角ひたすら売るのです。


それもなるべく定価で(笑)


その中に経済的に余裕のある裕福な固定客も何件かいっらしゃいましたので、なんとか目標売上は毎月達成できておりました。でも販売は苦しかったです。

売れた原因の一つを言いますと、自分でいうのも恐縮ですが、女性客が多かったのでモテたからです。こう見えても若い頃の私も捨てたものでなかったのですよ(笑)

それともう一つの原因は、前の営業マンが強引な方だったようで、性格的なギャップも大きくそれに救われたのもあるのでしょう。

やはり人は商品だけでなく、人を気に入り商品を購入するものなのですね。人は自分が嫌いな人から商品は買わないことが多いのです。このビジネスモデルは顧客密着型で、配置薬が消費された料金と商品販売代金で売上を上げるのです。

私が頂いていた給料と外商費から逆算すると、粗利益率は55%程度。この商売の粗利益率は結構高かったようですね。

配置販売業というくらいですから、商品販売のため薬箱を置いて頂いてからが勝負。

だから「薬を使わなくてもいいから置くだけで結構です」のセールストークがまかり通るのは、新規開拓営業マンのノルマもあるでしょうけど、今後訪問できるきっかけが欲しいかに他なりません。

薬箱が置いてあれば訪問の口実になりますし、それと身近に薬があれば便利で使いたくなりますよね。

特に企業においては従業員が頭の痛い時やお腹が痛い時によく使います。従業員の懐は痛みませんから、薬を自由勝手に使うのです。しかし企業側も費用が発生します。

勝手に使われると困りますから、ある会社ではこんな予防先が。

その予防策とは、従業員が勝手に使わない様、薬箱をガムテープでぐるぐると縛るのです(笑)


当然薬の消費は見込めません。そもそもそんなことしてあれば、置き薬としての意味をなさないのですが・・・。

しかしそれでも薬箱は持って帰らないのです。

そこに置いてあるだけでいいのです。

置いてあることに意味があり重要なのです。薬箱を持ち帰ることは、営業にとって屈辱です。例え数ヶ月間いや数年間薬が使用されていなくても絶対に阻止しなければなりません。

何故でしょうか?勿論、薬の消費が期待できる(現在は期待薄でしょう)もありますが、他に大きな理由があります。それは、契約件数を維持したいからと、訪問件数ノルマ達成のためにとっておきたいからです。

営業マンがそこに訪問した際、薬や商品が売れなくてもいいのです。

営業マンは当日の売上が達成出来た日は堂々と定時間内でも退社できます。そのために訪問件数(18件)の実績としてカウントするため必要とするのです。

訪問し伝票だけ記入し、「ハイ、さようなら」。これで1件の訪問ですから楽でしょう。

この様な顧客を我々はカス(今思えばひどい言葉です)と呼んでいました。

営業マンは1日あたりの売上目標が達成できれば決して無理はしません。明日売上がどうなるか分からないので、優良な訪問先は明日の売上の為に温存します。

毎朝朝礼で結果報告が全員の前であります。カス(ごめんなさい)は朝礼でいい結果を発表するための対策でもあります。

1日の目標売上に対し達成か未達で管理者の反応は大きく変わります。目標を達成していると笑顔になり、未達だと怖い顔になります。管理者として営業所全体の目標に影響しますからね。

また、朝礼での売上発表時に目標を達成していると全員が拍手してくれます。「俺は売上を達成しているのだ」とアピールすることもでき、自尊心を高められる心地よさもありましたね。その拍手もお義理の拍手。他の営業マンは想像ですが、内心「くそっ!この野郎!」と思っていたのでしょう。


そんな訳で、カス(すみません)も大変重要なのです。


これで配置販売業が「薬箱を置くだけでいい」という意味がお分かりいただけたしょう。


しかし、この仕事も早々(半年)に辞めました。

将来性に不安があり、お葬式があったのに有給が貰えなかったからと、虚偽のセールストークもあり、後ろめたさも加わったからです。辞める際専務に、この営業を1年間続ければ独立するための道も開けると言われましたが、私の心に響きませんでした。

半年間でしたが貴重な経験です。

現在システム自体は大きく変化しているでしょう。ノルマも違っているでしょう。しかし、訪問販売という基本モデルは変わっていないでしょう。

今では私がお世話になった会社も大きく様変わりしています。新しい事業もされており、配置販売業で培った顧客件数を沢山お持ちですので、その財産を使い新規事業を展開されていますね。潜在的ニーズの発掘です。

昔より時間に追われ忙しくなり人々の繋がりも希薄になった現代人。自宅へ戸別に訪問されることを嫌がる方もいらっしゃいますが、この仕組みは孤独死や近隣の防犯や事故を未然に防ぐため、あれば便利かなと思います。

いくら機械化や情報通信が発達しても、最後は人の力に頼らなければならないのです。今でも営業車を見かけた時、あの頃の思い出が蘇ります。

今お勤めの方も、私と同じ苦労をされているのかと思うと、少しセンチメンタルな気分になります。

過去と未来は繋がっています。あの時、配置薬販売業の営業を辞めたからこそ、今があります。

現在に至るまで紆余曲折ありましたけど、怪我の功名とでも言いますか、結果オーライですね。

人生どの様に結果でるか先は分かりませんね。だからこそ人は、やりがいや生きがいを求めて生きるのでしょう。

posted by ヨッシー at 14:25| Comment(1) | TrackBack(0) | 生きる
この記事へのコメント
こんにちは、大変楽しくブログを読ませていただきました。
実は僕も、去年まで某大手の置き薬の会社にいました。
やっている仕事内容はこのブログとまったく同じです。

ノルマがきつい上に達成できないと自腹を切りまくり、
自分の貯金を崩して年間50〜60万円を会社に払ってきました。
ひどい話です。

2009年6月から「登録販売者」という制度が出来て、
登録販売者でなければ医薬品の説明をしてはならないという法律があり、
社員は強制で受験(一年以上の実務経験があれば受験可能)させられました。

この受験費用(受験料1万5千円&交通費)はもちろん社員の自腹です。

ひどい話です。

今は置き薬の会社を辞めてドラッグストアに勤務しています。
本当に辞めてよかったです。
ドラッグストアには本当にたくさんのお客様がいらっしゃって、
いろんな商品をたくさん買ってくれます。

置き薬屋時代、商品がなかなか売れなくて悩んでいたのがアホみたいに・・。
社員があれこれ勧めなくても、お客様はたくさんの商品を買ってくれます。


本当にドラッグストアに転職してよかったです。。

Posted by あっくん at 2013年03月04日 12:42
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/57648939
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック